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腰痛の原因「すべり症」の初期症状5つ│見逃しやすい兆候とは

腰痛の原因「すべり症」の初期症状5つ│見逃しやすい兆候とは

すべり症とは?腰痛の主要な原因を解説

腰痛でお悩みの方は多いと思いますが、その原因の一つに「すべり症」があります。すべり症は正式には「腰椎すべり症」と呼ばれ、腰椎の一部が前方や後方にずれてしまう状態のことです。このずれによって神経が圧迫されたり、腰部の安定性が失われたりすることで、さまざまな症状が現れます。

私は鍼灸師として多くの腰痛患者さんを診てきましたが、すべり症は特に40代以降の方に多く見られる症状です。初期段階では軽い腰の違和感程度で見過ごされがちですが、進行すると日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

すべり症は大きく分けて「変性すべり症」と「分離すべり症」の2種類があります。変性すべり症は加齢による椎間板や椎間関節の変性が原因で起こり、中高年に多く見られます。一方、分離すべり症は椎弓部分の疲労骨折が原因で、スポーツをよく行う若い方に多いのが特徴です。

すべり症の診断には、レントゲン検査やMRI検査が用いられ、すべりの程度によってグレード1(25%未満のすべり)からグレード5(100%以上のすべり)まで分類されます。一般的に、すべりの程度が大きいほど症状も重くなる傾向がありますが、軽度のすべりでも強い痛みを生じる場合もあります。

腰椎すべり症の仕組みと神経圧迫の様子を示す医学イラストすべり症の初期症状5つ - 見逃しやすい兆候を知ろう

すべり症は進行するとかなり厄介な症状を引き起こしますが、初期段階では比較的軽い症状から始まります。これらの初期症状を見逃さず、早めに対処することが重要です。ここでは、すべり症の初期段階でよく見られる5つの兆候について詳しく解説していきます。

1. 腰の鈍痛や違和感

すべり症の最も一般的な初期症状は、腰の鈍い痛みや違和感です。特徴的なのは、長時間同じ姿勢でいると痛みが増すことです。例えば、デスクワークで長時間座っていたり、立ち仕事で同じ姿勢を続けたりすると、腰に違和感を覚えるようになります。

この痛みは、休息を取ると和らぐことが多いんですよね。でも、単なる疲れと勘違いして放置してしまう方も少なくありません。腰の鈍痛が2週間以上続く場合は、すべり症の可能性を考えて専門医に相談することをおすすめします。

私の臨床経験では、「何となく腰が重い」「腰に違和感がある」という訴えで来院される方の中に、レントゲン検査ですべり症が見つかるケースが少なくありません。特に初期段階では痛みよりも「違和感」と表現される方が多いのが特徴です。

2. 朝起きた時の腰のこわばり

すべり症の初期症状として見逃されがちなのが、朝起きた時の腰のこわばりです。夜間の安静により炎症反応が起こり、朝方に腰が硬くなったような感覚を覚えることがあります。

このこわばりは、通常30分から1時間程度で徐々に和らいでいくのが特徴です。「朝起きるのがつらい」「朝は腰が動かしにくい」といった症状がある場合は、すべり症の可能性を疑ってみる必要があるでしょう。

年齢とともに朝のこわばりは誰にでも多少は現れるものですが、特に40代以降で急に朝のこわばりが目立つようになった場合は注意が必要です。このこわばりは、単なる筋肉の疲れではなく、すべりによる神経や周囲組織への刺激が原因となっている可能性があります。

3. 前かがみで和らぎ、反り返ると悪化する痛み

すべり症に特徴的な症状として、姿勢による痛みの変化があります。特に、腰を反らせると痛みが強くなり、前かがみになると痛みが和らぐという特徴があります。

これは、前かがみの姿勢では神経への圧迫が軽減されるのに対し、腰を反らせると椎骨同士の接触面積が増え、神経への圧迫が強まるためです。「洗濯物を干す時に腰が痛い」「高い棚のものを取る時につらい」といった症状がある場合は、すべり症の可能性があります。

日常生活では、腰を反らせる動作は意外と多いんですよね。例えば、立ち上がる時、振り返る時、上を見上げる時など。こうした何気ない動作で痛みを感じる場合は、すべり症の初期症状かもしれません。特に、腰を反らせると「ピリッ」とした痛みを感じる場合は、神経が刺激されている可能性があります。

4. 長時間の立ち仕事や歩行後の疲労感

すべり症の初期段階では、長時間の立ち仕事や歩行後に腰部の疲労感や痛みが増すことがあります。これは、すべりのある部分に体重がかかり続けることで、周囲の筋肉が過剰に緊張するためです。

「買い物に行くと途中で腰が痛くなる」「立ち仕事の後半になると腰がつらい」といった症状がある場合は、すべり症の可能性を考慮すべきでしょう。

私がよく患者さんに言われるのは、「昔は何時間でも立っていられたのに、最近は1時間も立っていると腰がつらくなる」というものです。年齢による体力低下と思われがちですが、実はすべり症の初期症状である可能性もあります。特に、休憩して座ると楽になり、また立つと徐々に痛みが出てくるパターンがすべり症に特徴的です。

5. 足のしびれや軽い放散痛

すべり症が少し進行すると、腰だけでなく足にも症状が現れることがあります。初期段階では、足の一部にしびれや軽い放散痛(痛みが広がる感覚)を感じることがあります。

特に、お尻から太もも、ふくらはぎにかけての軽いしびれや痛みは、すべり症によって神経が軽度に圧迫されている可能性を示しています。「足が重い感じがする」「太ももの裏側がピリピリする」といった症状も見逃せません。

足のしびれは、すべり症が進行している可能性を示す重要なサインです。初期段階では間欠的で軽度のしびれですが、放置すると常時しびれを感じるようになったり、痛みが強くなったりする可能性があります。特に朝起きた時や長時間同じ姿勢を続けた後にしびれを感じる場合は、すべり症を疑う必要があるでしょう。

すべり症の進行度合いと症状の変化

すべり症は進行性の疾患であり、適切な対応をしないと徐々に症状が悪化していく可能性があります。ここでは、すべり症の進行度合いと、それに伴う症状の変化について解説します。

初期段階の症状と特徴

初期段階のすべり症では、前述した5つの初期症状が主に見られます。この段階では日常生活に大きな支障はなく、休息を取ることで症状が和らぐことが多いです。レントゲン検査では軽度のすべり(グレード1程度)が確認されることがあります。

初期段階でのすべり症は、適切な対応と生活習慣の改善によって進行を抑えることが可能です。この段階で気づき、対処することが重要なんですよね。特に多裂筋という腰の深部にある筋肉の衰えがすべり症の進行に関わっていることが最新の研究で分かってきています。

2025年に発表された研究では、多裂筋の脂肪変性(筋肉が脂肪に置き換わる現象)が進んでいる人ほど、すべり症の程度が重いことが示されています。この研究では221名のすべり症患者を対象に、腰の筋肉の状態を詳細に調査しました。その結果、すべり症の程度が重い人ほど筋肉の衰えが進んでいることが明らかになりました。

中期段階の症状と特徴

すべり症が進行すると、症状はより顕著になります。腰痛が持続的になり、足のしびれや痛みも強くなります。特に長時間の立位や歩行が困難になり、日常生活に支障をきたすようになります。

中期段階では、レントゲン検査でグレード2〜3程度のすべりが確認されることが多いです。この段階になると、保存療法だけでは症状のコントロールが難しくなることもあります。

私の臨床経験では、この中期段階で初めて医療機関を受診される方が多いんです。「もう我慢できない」「日常生活に支障が出てきた」というタイミングでの受診が多いのですが、この段階では既にすべりがかなり進行していることが少なくありません。

進行期の症状と合併症

すべり症がさらに進行すると、重度の腰痛や下肢の神経症状が現れます。歩行が著しく困難になったり、排尿・排便障害が現れたりすることもあります。レントゲン検査ではグレード4〜5の重度のすべりが確認されます。

進行期のすべり症では、手術療法が検討されることも多くなります。また、長期間にわたる腰部の不安定性により、二次的な問題として腰椎の変形や周囲筋肉の萎縮なども起こりやすくなります。

すべり症の進行を防ぐためには、初期症状の段階で適切な対応を取ることが非常に重要です。特に、多裂筋などの腰部深層筋を鍛えるエクササイズは、すべり症の進行予防に効果的であることが研究で示されています。

すべり症予防に効果的な多裂筋トレーニングの正しい姿勢を示すイラストすべり症の診断方法と見逃されやすいポイント

すべり症の診断には、医師による問診・身体診察に加え、画像検査が重要な役割を果たします。ここでは、すべり症の診断方法と、診断時に見逃されやすいポイントについて解説します。

医師が行う問診と身体診察

すべり症の診断では、まず医師による詳細な問診が行われます。痛みの性質、発症時期、悪化・改善する状況などについて質問されるでしょう。

身体診察では、腰椎の動きや神経学的検査が行われます。特に、前屈・後屈時の痛みの変化や、下肢の筋力・反射・感覚の評価が重要です。すべり症では、腰を反らせた時に痛みが増強することが特徴的です。

ただ、問診や身体診察だけでは、すべり症と他の腰痛疾患(椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など)との区別が難しいケースもあります。そのため、確定診断には画像検査が必要となります。

レントゲン検査とMRI検査の重要性

すべり症の確定診断には、レントゲン検査が最も基本的で重要です。側面像(横から撮影した画像)で椎骨のずれを直接確認することができます。このずれの程度によって、グレード1〜5に分類されます。

MRI検査では、神経の圧迫状況や椎間板・椎間関節の状態をより詳細に評価することができます。また、最新の研究では、MRIで多裂筋の脂肪変性を評価することも、すべり症の進行予測に役立つことが分かってきています。

2025年の研究では、多裂筋の脂肪変性(MFI:Multifidus Fatty Infiltration)がすべり症の進行を予測する最も重要な因子であることが示されています。MRI検査では、この筋肉の状態も評価することが重要です。

見逃されやすい診断ポイント

すべり症の診断で見逃されやすいポイントとして、以下のようなものがあります:

  • 軽度のすべりは症状と相関しないことがある(軽度のすべりでも強い症状が出ることもあれば、重度のすべりでも症状が軽いこともある)
  • 他の腰痛疾患と併存していることが多い(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などと合併している場合、どちらが主な原因かの判断が難しい)
  • 動的不安定性の評価が不足している(静的な画像だけでなく、動的な不安定性の評価も重要)
  • 多裂筋などの腰部深層筋の評価が不足している(筋肉の状態がすべり症の進行に関与している)

特に、初期段階のすべり症では、レントゲン検査でのすべりが軽度であるため見逃されることがあります。症状と画像所見が一致しない場合は、動的な評価や筋肉の状態評価なども含めた総合的な診断が必要です。

私の臨床経験では、「ぎっくり腰」と診断されて治療を受けていたが、実はすべり症が原因だったというケースも少なくありません。特に繰り返す腰痛がある場合は、すべり症の可能性も考慮した詳細な検査が重要です。

すべり症の予防と初期症状への対処法

すべり症は進行性の疾患ですが、適切な予防策と初期症状への対処によって、進行を抑えることが可能です。ここでは、すべり症の予防法と初期症状が現れた際の対処法について解説します。

日常生活での予防策

すべり症を予防するためには、日常生活での姿勢や動作に注意することが重要です。以下のような予防策が効果的です:

  • 正しい姿勢を心がける(特に長時間のデスクワークでは腰を立て、背もたれを使って安定した姿勢を保つ)
  • 重いものを持ち上げる際は膝を曲げて腰に負担をかけないようにする
  • 長時間同じ姿勢を続けないよう、定期的に姿勢を変える
  • 適度な運動を継続して腰部の筋力を維持する
  • 体重管理を適切に行い、腰への負担を減らす

特に重要なのは、多裂筋などの腰部深層筋を鍛えることです。「バードドッグ」と呼ばれる四つん這いで対角の手足を伸ばすエクササイズは、多裂筋を効果的に鍛えるのに役立ちます。

また、バランスの良い食事も重要です。特に、タンパク質をしっかり摂ることが筋肉を健康に保つために必要です。ビタミンDやカルシウムも、骨や筋肉の健康を支えるため、適度な日光浴とともに、乳製品や小魚を積極的に摂ることがすすめられます。

初期症状が現れた際の対処法

すべり症の初期症状が現れた場合、以下のような対処法が効果的です:

  • 過度な腰部への負担を避ける(重いものを持ち上げる、腰を反らせる動作などを控える)
  • 適度な休息を取りながらも、長期間の安静は避ける(適度な活動は血流を促進し、回復を助ける)
  • 温熱療法や冷却療法を状況に応じて使い分ける(急性期は冷却、慢性期は温熱が効果的)
  • 腰部サポーターなどを一時的に使用して腰部の安定性を高める
  • 痛みが強い場合は市販の鎮痛剤を適切に使用する(ただし、長期間の使用は避ける)

初期症状の段階で適切に対処することで、すべり症の進行を抑えることができます。しかし、症状が2週間以上続く場合や、徐々に悪化する場合は、専門医への相談が必要です。

私の臨床経験では、初期症状の段階で適切な筋力トレーニングと生活習慣の改善を行った患者さんは、症状の進行が抑えられるケースが多いです。特に40代〜60代の女性は、ホルモンバランスの変化によって骨や筋肉の質が低下しやすいため、より積極的な予防策が重要です。

専門医への相談のタイミング

すべり症の初期症状が現れた場合、以下のようなタイミングで専門医への相談を検討しましょう:

  • 腰痛が2週間以上続く場合
  • 痛みが徐々に強くなる、または範囲が広がる場合
  • 足のしびれや痛みが現れた場合
  • 日常生活や仕事に支障をきたすようになった場合
  • 夜間痛や安静時痛がある場合

専門医を受診する際は、整形外科や脊椎専門クリニックがおすすめです。診察では、いつから症状があるか、どのような動作で痛みが増すか、これまでの治療歴などを詳しく伝えることが重要です。

早期の専門的診断と適切な治療計画の立案によって、すべり症の進行を抑え、症状の改善を図ることができます。特に初期段階では、保存療法(薬物療法、理学療法、生活指導など)が中心となりますが、これらを適切に組み合わせることで高い効果が期待できます。

まとめ:すべり症の初期症状を見逃さないために

すべり症は、腰椎の一部が前方や後方にずれることで、さまざまな症状を引き起こす疾患です。初期段階では比較的軽い症状から始まりますが、進行すると日常生活に大きな支障をきたすこともあります。

本記事で解説した5つの初期症状(腰の鈍痛や違和感、朝起きた時の腰のこわばり、前かがみで和らぎ反り返ると悪化する痛み、長時間の立ち仕事や歩行後の疲労感、足のしびれや軽い放散痛)に心当たりがある方は、すべり症の可能性を考慮する必要があります。

最新の研究では、多裂筋などの腰部深層筋の衰えがすべり症の進行に関与していることが明らかになっています。特に多裂筋の脂肪変性が進んでいる人ほど、すべり症の程度が重いことが示されています。

すべり症の予防と初期症状への対処には、正しい姿勢の維持、適切な運動習慣、バランスの良い食事が重要です。特に「バードドッグ」などのエクササイズで多裂筋を鍛えることが効果的です。

症状が2週間以上続く場合や、徐々に悪化する場合は、専門医への相談をおすすめします。早期の適切な診断と治療によって、すべり症の進行を抑え、症状の改善を図ることができます。

腰痛は日常生活の質を大きく低下させる要因となります。「年だから仕方ない」と諦めず、適切な対処を行うことで、多くの場合は症状の改善が期待できます。特にすべり症の初期症状を見逃さず、早めに対応することが重要です。

私は鍼灸師として、多くの腰痛患者さんの治療に携わってきましたが、特に中高年の女性は骨や筋肉の質が低下しやすいため、より積極的な予防と対処が必要です。日々の生活習慣の中に、腰を守るための取り組みを取り入れていきましょう。

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代表荻埜 滉大(おぎのこうた)
店舗住所〒664-0886 兵庫県伊丹市昆陽東3丁目4-1
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  • 腰椎すべり症やその他の医学的な状態の診断と治療については、必ず医師またはその他の資格のある医療専門家にご相談ください。

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