
腰痛と天気の不思議な関係性
「明日は雨が降りそうだ」
そう言って腰をさする姿を見たことがある方も多いのではないでしょうか。実はこれ、単なる言い伝えではなく、科学的な根拠があるんです。
私は鍼灸師として多くの腰痛患者さんを診てきましたが、天気が悪くなる前に「なんだか腰が重だるい」と訴える方が驚くほど多いんですよね。特に40代以降の女性に多い印象です。
腰痛持ちの方なら、低気圧が近づいてくると腰の痛みが強くなる経験をしたことがあるかもしれません。これは気のせいではなく、「気象病」と呼ばれる現象の一つなんです。
2022年の国民生活基礎調査では、自覚症状がある症状の第1位が男女ともに腰痛でした。そして第2位が肩こりという結果になっています。日本人の多くが抱えるこの腰痛の悩み、実は天気と深い関係があったんです。
気象病とは?腰痛との関連を科学的に解説
「気象病」という言葉を聞いたことはありますか?これは気圧や湿度、気温などの気象の変化によって引き起こされるさまざまな症状の総称です。
気象病の症状には、頭痛やめまい、気分の落ち込み、動悸、食欲不振、吐き気などがあります。また、腰痛や肩こり、神経痛、関節炎、リウマチといった持病の悪化も含まれるんです。
気象病は単なる迷信ではなく、科学的に存在が確かめられている現象です。中の気圧を調節できる実験室で、実際の気象に模して気圧を下げると、痛みが強くなることが確認されています。
さらに京都大学では関節リウマチ患者に対して2万人規模の実験が行われ、気圧の低下によって痛みの症状が強くなることが証明されているんですよ。
気象病による腰痛悪化のメカニズム
気象病で腰痛が悪化するメカニズムは、主に自律神経の乱れが関係しています。
大きな気圧変化が起こると、耳の奥にある内耳という器官で気圧変化を感知します。内耳は「気圧センサー」としての役割を持っているんですね。気圧変化を感知すると交感神経が活発になり、血管の収縮が起こって血流が悪くなります。
血流が悪くなることで筋肉が緊張したり、酸素の欠乏が招く組織の障害により痛みを発生させる物質(発痛物質)が出されることで腰痛が生じると考えられています。
また、気温の寒暖差も腰痛に影響します。気温が大きく下がって体が冷えると、筋肉を硬直させる疲労物質の乳酸などが作られ溜まってきます。この疲労物質によって筋肉が硬直し、腰や肩にある血管や末梢神経を圧迫します。
圧迫された血管は血流が悪くなり、疲労物質がさらに溜まりやすくなるという悪循環が生じるんです。筋肉の硬直により圧迫された末梢神経では神経組織が圧迫されてダメージを受け、そこから痛みを感じるようになります。
このため、腰や肩はできるだけ冷やさないように注意することが大切なんですよ。
自律神経の乱れと腰痛の関係
「自律神経の乱れ」とはどのようなことでしょうか。自律神経とは自分の意志と関係なく働きをする神経で、交感神経と副交感神経があり、呼吸・循環・消化・排泄など生命維持に必要な機能をバランスよく調整します。
通常は昼間や活動時は交感神経が活発になり、夜や安静時は副交感神経が活発になります。交感神経と副交感神経が交互にバランスを取り、身体が維持できるようにしているんです。
「自律神経の乱れ」は交感神経と副交感神経のいずれかの負担が大きくなり、バランスが崩れることを指します。自律神経が乱れることにより様々な体の不調が現れます。
気象変化、特に気圧の低下は自律神経系に影響を与え、それがストレスとなって腰痛などの症状を悪化させるんですね。
気象病の症状と腰痛への影響
気象病の代表的な症状には、頭痛、だるさ、めまい、耳鳴り、倦怠感、関節痛、肩こり、腰痛、気分の落ち込み、眠気、イライラ、ブレインフォグ、腹痛、下痢などがあります。
気象病は頭痛やめまいという症状が有名ですが、頭痛があまりはっきりしてなくて、そもそも頭痛を自覚していないケースもあるんです。そういう場合はおなかが痛い、下痢をすることが前面に出ていることもあります。特に子どもや女性に多いですね。
私の患者さんの中には、天気が崩れる前々日におなかを壊し、その翌日に頭痛が起こるなど、症状が二段階で現れる人もいますよ。
腰痛に影響する気象要素
気象病による腰痛に影響する主な気象要素は以下の3つです。
1つ目は「気圧」です。特に気圧が下がると腰痛が悪化しやすくなります。低気圧が近づくと体内の圧力とのバランスが崩れ、神経や筋肉に影響を与えるんです。
2つ目は「寒暖差」です。気温の急激な変化は筋肉の緊張を引き起こします。特に寒くなると血行が悪くなり、筋肉が硬くなって腰痛が悪化しやすくなります。
3つ目は「湿度」です。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温調節が難しくなります。梅雨時期などは特に注意が必要です。
これらの気象要素が変化すると、体内では自律神経のバランスが崩れ、血流が悪くなったり、筋肉が緊張したりして腰痛が悪化するんですね。
梅雨時期に腰痛が悪化する理由
梅雨時期は特に腰痛が悪化しやすい時期です。その理由はいくつかあります。
まず、梅雨時というのは、低気圧が繰り返し前線の上を通過している状態で、気圧が毎日のように変動します。その影響で、腰痛などの天気痛が引き起こされやすくなるんです。
さらに、梅雨特有の高い湿度や寒暖差は、天気痛を悪化させる憎悪因子となります。関節リウマチや関節痛、神経痛、スポーツ外傷などは、特に梅雨時に痛みが出やすいですね。
また、梅雨時は湿度が高く、汗をかきにくいことも問題です。肌に何かが張り付くような感じがしますが、実際に水分が蒸発しづらく、発汗作用が機能していない状態なんです。これが長く続くと、汗をかきづらい身体になってしまいます。
日照時間も短いことから精神的にイライラしたり、うつ症状が出やすい人もいます。これらの要因が複合的に作用して、梅雨時期は腰痛が悪化しやすくなるんですよ。
気象病による腰痛の対処法3つ
気象病による腰痛に悩まされている方に、私が臨床で実践している3つの対処法をご紹介します。これらは科学的根拠に基づいた方法ですので、ぜひ試してみてください。
1. 自律神経を整える生活習慣の改善
気象病の根本的な原因は自律神経の乱れです。そのため、自律神経を整える生活習慣の改善が非常に重要です。
まず、規則正しい生活リズムを心がけましょう。毎日同じ時間に起床・就寝することで、体内時計が整い、自律神経のバランスが保たれます。
食事も重要です。バランスの良い食事を心がけ、特に腸内環境を整えることが自律神経の安定につながります。発酵食品や食物繊維を積極的に摂取しましょう。
適度な運動も効果的です。激しい運動ではなく、ウォーキングやストレッチなど、軽い運動を継続的に行うことで血行が促進され、筋肉の緊張がほぐれます。
また、ストレス管理も大切です。瞑想やヨガ、深呼吸などのリラクゼーション法を取り入れると、自律神経のバランスを整えるのに役立ちます。
特に梅雨時は室内にこもりがちですが、晴れ間があったら外に出て、身体を動かすことをお勧めします。散歩や軽く汗をかく程度の運動がいいですね。
雨が降る日は副交感神経が優位になりやすく、体内リズムが乱れがちです。太陽が顔を出したら意識して光を浴びることで自律神経を整えましょう。食事や睡眠など生活のリズムを保ち、お腹を冷やさないことも大切です。
2. 気圧変化に備える体調管理
気圧の変化を予測し、事前に対策を講じることも重要です。
まず、天気予報をこまめにチェックしましょう。低気圧が近づいていることが分かれば、事前に対策を立てることができます。最近では気象病・天気痛に特化した予報サービスもあるので、それらを活用するのも良いでしょう。
気圧が下がる前に温かい飲み物を飲んだり、軽いストレッチを行ったりすることで、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげることができます。
また、気圧変化に備えて、腰を温めることも効果的です。腰用のサポーターや温熱パッドを使用して、腰部の血行を良くしておきましょう。
気圧を感知する耳の血行をよくする工夫も大切です。耳周辺のマッサージや、耳を温めることで、気圧変化による影響を軽減できることがあります。
さらに、水分摂取も重要です。適切な水分補給は血液の循環を促進し、老廃物の排出を助けます。特に気圧が変化する前は、意識して水分を摂るようにしましょう。
3. 東洋医学的アプローチによる対策
私は鍼灸師として、東洋医学的なアプローチも腰痛対策に取り入れています。
東洋医学では、気象の変化による体調不良を「六淫」(風、寒、暑、湿、燥、火)という外的要因によるものと考えます。特に「湿」と「寒」は腰痛に関係が深いとされています。
「湿」は梅雨時期などの湿度の高い時期に影響が強く、体が重だるく感じたり、むくみやすくなったりします。「寒」は冷えによって筋肉が緊張し、血行不良を引き起こします。
これらに対処するために、まず「養生」という考え方が重要です。養生とは、身体を動かす、規則正しい生活をする、お腹を冷やさないなど、基本的な健康管理のことです。
具体的な対策としては、体を温めることが基本です。特に下半身と腰部を冷やさないように注意しましょう。冷たい飲み物や食べ物を控え、温かいものを摂るようにします。
また、ツボ押しも効果的です。腰痛に効果的なツボには、腰の両脇にある「腎兪(じんゆ)」や、ふくらはぎの中央にある「承山(しょうざん)」などがあります。これらのツボを優しく押すことで、気の流れを整え、痛みを和らげることができます。
さらに、漢方薬や鍼灸治療も気象病による腰痛に効果的です。特に「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」や「芍薬甘草湯」などは、冷えによる筋肉の緊張や痛みに効果があるとされています。
ただし、漢方薬は自己判断で服用せず、専門家に相談することをお勧めします。
気象病による腰痛を予防するための日常習慣
気象病による腰痛は、日常生活での予防も非常に重要です。以下に、予防のための習慣をご紹介します。
体を冷やさない工夫
腰痛予防の基本は、体、特に下半身を冷やさないことです。
まず、服装に気を配りましょう。気温の変化に対応できるよう、重ね着をして調節できるようにするのがポイントです。特に腰回りは冷やさないよう、腹巻やサポーターを活用するのも良いでしょう。
入浴も重要です。ぬるめのお湯(38〜40度程度)にゆっくりつかることで、全身の血行が促進されます。特に腰回りをしっかり温めるようにしましょう。
食事面では、体を温める食材を積極的に摂りましょう。生姜、ねぎ、にんにくなどの香味野菜や、根菜類は体を温める効果があります。冷たい飲み物や食べ物は控え、温かいものを選ぶようにしましょう。
また、足元を冷やさないことも大切です。冷たい床の上で長時間過ごすことは避け、スリッパや靴下を活用しましょう。座る際には、直接冷たい場所に座らず、クッションなどを敷くと良いですね。
適度な運動と筋力強化
腰痛予防には、適度な運動と腰周りの筋力強化が効果的です。
まず、ウォーキングなどの有酸素運動を定期的に行いましょう。これにより全身の血行が促進され、筋肉の緊張が緩和されます。
次に、腰周りの筋力を強化する運動を取り入れましょう。特に腹筋と背筋のバランスを整えることが重要です。プランクやブリッジなどの体幹トレーニングは、腰を支える筋肉を強化するのに効果的です。
ただし、運動は無理のない範囲で行うことが大切です。激しい運動や、サウナで大量の汗をかくなど、"極端な努力"はよくありません。大量の汗をかけば身体が脱水状態になり、血液が濃くなって脳梗塞などのリスクが高まります。
また、ストレッチも重要です。特に腰、背中、ハムストリングス(太ももの裏側)のストレッチは、腰痛予防に効果的です。朝起きた時と寝る前に軽くストレッチを行うと良いでしょう。
腰痛日記をつけてみよう
気象病による腰痛の予防には、自分の体調と天気の関係を知ることも重要です。そのために「腰痛日記」をつけることをお勧めします。
腰痛日記には、その日の天気(気圧、湿度、気温など)と、腰痛の程度、どんな状況で痛みが強くなったか、どんな対策をして効果があったかなどを記録します。
これにより、自分の腰痛がどのような気象条件で悪化しやすいかのパターンが見えてきます。例えば、「気圧が急激に下がる時に痛みが強くなる」「湿度が高い日が特につらい」といった傾向がわかれば、それに合わせた対策を事前に講じることができます。
また、どんな対策が効果的だったかも記録しておくと、次に同じような状況になった時に役立ちます。
腰痛日記は特別なものである必要はなく、スマートフォンのメモアプリや、普通のノートで構いません。大切なのは継続して記録することです。
これらの記録は、医療機関を受診する際にも役立ちます。医師や鍼灸師などの専門家に自分の症状を正確に伝えることができ、より適切な治療を受けることができるでしょう。
気象病による腰痛はいつ病院に行くべき?
気象病による腰痛の多くは、これまで説明してきた対策で改善することが多いです。しかし、以下のような場合は、専門医への受診を検討しましょう。
受診を検討すべき症状
以下のような症状がある場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
まず、痛みが強く、日常生活に支障をきたす場合です。痛みのために仕事や家事ができない、睡眠が妨げられるといった状況であれば、受診を検討しましょう。
次に、痛みが長期間(2週間以上)続く場合です。通常、一時的な腰痛は数日から1週間程度で改善することが多いですが、それ以上続く場合は何らかの問題がある可能性があります。
また、腰痛に加えて、足のしびれや脱力感、排尿・排便障害などの症状がある場合は、神経の圧迫など重大な問題がある可能性があるため、すぐに受診してください。
発熱を伴う腰痛や、原因不明の体重減少がある場合も、感染症や内臓の問題など、深刻な疾患の可能性があるため、早めに受診しましょう。
さらに、腰に強い打撃を受けた後の痛み(外傷後の痛み)や、高齢者の急な腰痛(特に骨粗しょう症がある場合)も注意が必要です。
受診する際の医療機関の選び方
腰痛で受診する際、どのような医療機関を選べばよいでしょうか。
まずは整形外科が一般的です。腰痛の原因として多い椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、骨粗しょう症などの診断と治療を行います。
神経症状(しびれや麻痺)が強い場合は、脳神経外科も選択肢となります。
痛みが主な症状で、原因がはっきりしない場合は、ペインクリニック(痛み専門外来)も検討してみましょう。
また、東洋医学的なアプローチを希望する場合は、鍼灸院や漢方専門の医療機関も選択肢です。気象病による腰痛は、東洋医学が得意とする分野でもあります。
最近では「気象病外来」や「天気痛外来」を設けている医療機関も増えてきています。これらの専門外来では、気象変化による体調不良に特化した診療を受けることができます。
受診する際は、これまでの症状の経過や、天気との関連性についてメモしておくと、医師に正確に伝えることができます。先ほど紹介した腰痛日記があれば、より詳細な情報を提供できるでしょう。
まとめ:気象病と上手に付き合い、腰痛を軽減しよう
今回は、腰痛と天気の関係、いわゆる「気象病」について詳しく解説しました。
気象病は単なる言い伝えではなく、科学的にも証明されている現象です。低気圧の接近や湿度の上昇、気温の変化などが、内耳の気圧センサーを通じて自律神経に影響を与え、腰痛を悪化させることがわかっています。
気象病による腰痛への対処法としては、以下の3つが効果的です。
1. 自律神経を整える生活習慣の改善:規則正しい生活リズム、バランスの良い食事、適度な運動、ストレス管理などが重要です。
2. 気圧変化に備える体調管理:天気予報のチェック、事前の対策(温かい飲み物、ストレッチなど)、腰を温める工夫などが効果的です。
3. 東洋医学的アプローチ:体を冷やさない工夫、ツボ押し、漢方薬や鍼灸治療なども選択肢となります。
予防のためには、体を冷やさない工夫、適度な運動と筋力強化、腰痛日記をつけるなどの習慣が役立ちます。
また、痛みが強く日常生活に支障をきたす場合や、長期間続く場合、神経症状を伴う場合などは、専門医への受診を検討しましょう。
気象病による腰痛は完全に避けることは難しいかもしれませんが、適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることができます。自分の体と天気の関係を知り、上手に付き合っていくことが大切です。
腰痛に悩まされている方は、ぜひこの記事で紹介した対策を試してみてください。天気に左右されない、健やかな毎日を送れることを願っています。
アクセス(店舗情報)
店舗名 | 伊丹くすのき整体院 |
代表 | 荻埜 滉大(おぎのこうた) |
店舗住所 | 〒664-0886 兵庫県伊丹市昆陽東3丁目4-1 |
電話番号 | 072-747-0703 |
営業日、営業時間 | 月・水~金:8時00分~20時00分 土曜日8時00分~18時00分 日曜日祝日:8時~12時 【火曜定休日】 |

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